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日本の相続問題(その3)~中小企業・経営者~ 芳賀則人の言いたい放題No196
昨年は、東日本大震災という阪神大震災を大きく上回る災害を経験しました。今なお、福島県は福島第1原発による放射能被害が全く予断を許さない状況であります。我々は、このことを決して忘れないようにサポートしていくことが重要だと思います。
遺産総額が5億円以上になると、やはり「金持ちケンカせず」の格言通り揉める家庭は総数の内0.6%しかありません。揉めた家族が1000組あるとして5億円以上の家庭は6組しかないということでしょうか。
富裕層とは…いろいろな出所がありますが、居住用不動産を除いた純資産額が100万ドル以上、日本的にはマイホームを除き純資産を1億円以上持っている人々のことを指すということで良いと思います。
尚、2011年4月のイギリス不動産大手のナイトフランクの調査では日本人で、これに該当する人は約165万人いるとのことです。
しかし今回取り上げる富裕層は概ね5億円以上の人々をイメージしています。これらの人々を野村総合研究所では超富裕層と言っています。
とはいっても、この5億円をどのように積み上げたか(稼いだか)によって金銭感覚は違います。私なりに(資産のない私がイメージするのもなんですが)考えた富裕層を類型別に列挙します。
1.大都市近郊の元々の山林系大地主型
(農地解放でも山林は取られなかったので膨大な土地が残った)
2.大都市近郊農地からの宅地化による資産家型
(いわゆる名主と農地解放より地主になった小作等の地主階層)
3.戦後、事業を起こして成功した経営者富裕層
(自社株と土地も複数所有)
4.医師、弁護士等の専門型職業で成功した富裕層
5.株式投資や不動産投資で財産を築いた富裕層
(ここまでは前回と同じ文章です。)
日本の相続問題という大それたタイトル最終回は、上記の3にあたる、日本の経済・社会を支えている中小企業及び、その経営者にスポットを当ててみたいと存じます。ただ、あまりにも範囲が広すぎるので、私が体験したことを話の筋において考えて行こうという試みです。
ところで、中小企業というのは何を言うのでしょうか。(以下は中小企業白書より引用)
『中小企業は、経済、社会において、どのような役割を担っているのかを再認識するとともに、急速な景気低迷や深刻化する構造的課題の中で、中小企業の良さをどのように維持していくのかを分析。中小企業は、企業数の99.7%、雇用の約7割を占めている。中小企業は、多くの付加価値を生み出し、サプライチェーンの中核を担うなど、我が国の産業の基盤を支え、生活必需品の供給者や地域コミュニティの中心として、地域の消費や社会を支えている。震災でも、こうした中小企業の重要性が再認識された。
震災により、国内需要の収縮やグローバル競争の激化等の構造的課題が深刻化する中展望が開けない中小企業も存在することから、中小企業の事業引継ぎ、事業再生、地域密着型金融等により、経済社会を支える中小企業の良さを今後の経済成長につなげていく必要がある。』
中小企業とは、中小企業基本法第2条第1項の規定に基づく「中小企業者」をいう。また、小規模企業・零細企業とは、同条第5項の規定に基づく「小規模企業者」をいう。具体的には、おおむね下記に該当する企業を指す。
(表省略)
2006年の調査では(5年前と古いですが)中小企業数は419万社(内、常勤雇用者20人以下の小規模企業数が366万社)大企業は12,300社と少なく、日本は中小企業の集合体であることが分かります。
しかし、この景気の状態ですので、中小企業数はこれより10%程度減っているとのデータもあります。ともあれ、社長と言われる人がまだ日本には400万人以上(全人口12,700万人の3%です。驚きです。3%というのは何と不思議。)存在することだけは確かです。
もちろん、この内の何人に相続税が発生するかは定かではありませんが、ほとんど全ての社長に起こるのが「事業承継」という問題です。それは相続税とは無縁であっても、生前か死後かを問わず社長交代期は必ずやって来ます。
廃業・清算・解散という方法で事業を畳む人は、事業承継はないにしても、相続から逃れるわけには行きません。
一方、M&A、MBOで親族以外に株を譲渡する場合や、息子や娘が後継者となる親族内承継型の発展的な継続を
選択する場合は、相続と事業承継が重なるため問題が複雑化します。
それは中小企業の株式は一般的に売買市場がないため、不動産に比べて換金性に極めて劣る財産であることが原因です。さらに不動産があると、これの評価が株式に乗って来るので、ますます分けが分からなくなります。
仮にA社の場合とします。父親(社長)80歳、配偶者なし、長男55歳が後継者候補の場合(弟が2人、妹1人が相続人、株式評価が10億円で会社所有不動産が5億円とする)もし、この長男に子供がいない場合、(この先も子供が出来ないと仮定)長男が株式の全て(集中させて)を相続してしまうとどうなるかです。
この長男が存命の内はいいのですが、何も手を打たないで、長男に相続が起きると、その株式の4分の3は配偶者の一族の物になってしまうという、A家一族にとっては許し難い問題になってしまいます。
では、弟や妹に分散させてしまうとどうなるかです。会社経営にタッチしていない兄弟が発言権を持つとロクなことはありません。だからと言って長男に、よそで子供を作って来いとは言えませんし…。
次はB社の場合です。父親75歳、配偶者73歳、子供は娘が一人で会社経営とは無縁の状態で45歳独身。売り上げ4億円、株式評価1億円、従業員20人の自動車関連メーカー部品会社。創業者と苦楽を共にしてきた番頭さん格60歳の存在あり。
日本社会における典型的な中小企業の形態である、この会社の行く末はどうなるか。相続税の心配はほとんどありませんが、事業承継は極めて困難な状況になります。番頭さんに1億円の資金を出せる分けもなく、従業員の雇用を守るためには、M&Aで株式を売買するのが一番いい方法だと思います。
しかし会社命と思っている現社長が存命の内に、この話を切り出すのは誰が適任でしょうか。ここは経理を見ている顧問税理士の役割が大きいと感じます。現役でバリバリやっている社長は気付いていない場合が多いと思います。あらゆる情報を駆使して、中小企業の後継問題を訴える必要があると思います。
経済産業省は事業承継税制への取り組みは大いにPRしていますが、「会社の相続」が如何に大変であるかをもっと目線を下げて宣伝するべきと思います。
(平成24年1月)





