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日本の相続問題(その2)~富裕層編~ 芳賀則人の言いたい放題
前回も付けた法務省の司法統計資料による遺産分割事件の動きです。
(表省略)
遺産総額が5億円以上になると、やはり「金持ちケンカせず」の格言通り揉める家庭は総数の内0.6%しかありません。揉めた家族が1000組あるとして5億円以上の家庭は6組しかないということでしょうか。
富裕層とは…いろいろな出所がありますが、居住用不動産を除いた純資産額が100万ドル以上、日本的にはマイホームを除き純資産を1億円以上持っている人々のことを指すということで良いと思います。
尚、2011年4月のイギリス不動産大手のナイトフランクの調査では日本人で、これに該当する人は約165万人いるとのことです。
しかし今回取り上げる富裕層は概ね5億円以上の人々をイメージしています。これらの人々を野村総合研究所では超富裕層と言っています。
とは言っても、この5億円をどのように積み上げたか(稼いだか)によって金銭感覚は違います。私なりに(資産のない私がイメージするのもなんですが)考えた富裕層を類型別に列挙します。
1.大都市近郊の元々の山林系大地主型
(農地解放でも山林は取られなかったので膨大な土地が残った)
2.大都市近郊農地からの宅地化による資産家型
(いわゆる名主と農地解放より地主になった小作等の地主階層)
3.戦後、事業を起こして成功した経営者富裕層
(自社株と土地も複数所有)
4.医師、弁護士等の専門型職業で成功した富裕層
5.株式投資や不動産投資で財産を築いた富裕層
金銭感覚で言えば、1・2の人々は以外に質素に暮らしています。それは親から引き継いだ財産をなるべく減らさないようにとの保守的な考えから来るのでしょう。(もちろん派手にやっている人も中にはいますが、少数です)
本稿では、これらの地主型の富裕層を考えてみます。尚、地主型の資産総額については、特に東京都や神奈川県の東京寄りの地域では5億円は小型の方です。
私の経験では20~30億円クラスは、ざらにいます。ちなみに私が10年前にお付き合いした地主さんは100億円クラスの方もいました。そうすると2次相続(本人と配偶者が亡くなると)を経ると債務の高にもよりますが、何も手を打たなければ税額は、その40~50%近くになります。つまり資産総額は50~60%に目減りしてしまいます。これらの方の資産構成は圧倒的に土地が占めており全資産の95%が土地という方もいます。
しかしこの土地資産を有効に使っていない方が、ほとんどと言っても過言ではありません。つい20~30年前までは農業を中心に生活を営んできたので致し方ないのですが、もう少し自分の土地を如何に社会に貢献出来るかの視点を持って土地経営にあたってもらえればと思うことが、しばしばあります。
話を戻します。
これらの地主型富裕層の相続は基本的には長子(家督)相続です。民法上は均分相続ですが、そんなことをしていては「本家」が持ちません。仮に10億円の資産だとすると7~8億円は本家(長男)が相続しているのが実態です。
本家の役割は様々です。先祖から受け継いだ資産の継承、兄弟の盆・正月の接待、法事の仕切り、寺社への寄進、お祭り等の近所付き合い等々。かなりの出費になります。だから本家がその資産の大半を持っている必要があるのです。
これは次男以下の子供たちには、ほぼ暗黙の了解が存在しており、だからこそ冒頭の表に示す通り5億円以上の資産家は大きな争いにはならないのです。長男以下は、そこそこの財産を分けられて納得するのが一般的です。これは地主層の先祖が築いた財産を皆で守っていくという知恵と言えるかもしれません。
これは私の経験上、3の形の事業で成功した富裕層に兄弟間での争いが比較的多いのとは対照的です。
しかし、これからも永遠に続くという保証はありません。団塊の世代(60~65歳)が相続人の立場でいる間は、この形態が続く可能性はまだありますが、次の世代の40代~50代が相続人になったとき(20~30年後)つまり団塊の世代が85歳になり被相続人になる時に同じように円満に行くかどうかは、かなり疑問符を付けざるを得ません。定年制や年金や健康保険の劣化が大きくなることが予想されます。個々の格差が今以上に大きくなります。資産額が大きいからこそ相続に大きな影をもたらすでしょう。
土地富裕層は20年後に備えて今から、その対策を考えるべきだと思います。
(平成23年12月)





